授業科目

博物館資料保存論
Theory of the Preservation Museum Collection

担当者

講師   柴田 健一郎
前 土1-土2

単位

2

到達目標

 本科目の到達目標は、受講生が、博物館における資料保存及びその保存・展示環境及び収蔵環境を科学的に捉え、資料を良好な状態で保存していくための知識を習得することを通じて、博物館資料の保存に関する基礎的能力を養うことである。
 本学のカリキュラム・ポリシーに従い、博物館学の入門から応用まで、知識や専門的なものの見方を順を追って体系的に身につけられるようにカリキュラムを編成しており、本講義はその中で、博物館資料の保存を重点的に学習する。本科目を履修する前に、または同時に、博物館概論を履修しておくことが望ましい。また、博物館実習IならびにIIを履修しようと計画している者は、本科目を先に履修すること。

授業内容

 博物館資料の適切な保存について学ぶ。資料の状態について調査し、必要に応じてその修復や修理を行う体制を整える。資料保存及び展示方法についてその物理的化学的環境状況を資料の特性を考慮して決定する。資料の生物学的な被害を免れるための方策を収集し、対策を講じる。災害への対策と、被災した資料のレスキューについて実例を挙げながら講義する。
 博物館が実際に行っている地域資源の収集・保存・展示教育普及の例を紹介し、その活動が文化財の保護・保全に大きく貢献することを学ぶ。特に神奈川大学理学部で志す自然史においては自然環境の保全・保護と関係する生物多様性や種の保存につながる教育に発展させる。

授業計画

 各回の講義内容は次のように予定しているが、時間の関係で若干前後する場合もある。
 各回共通の予習として、以下に示す内容を、参考書を読むことにより概要をつかみ、分からない用語を調べ、疑問点を整理しておくとよい。ウェブサイトでの検索も有効である。復習としては、授業内容を確認するとともに、自分が専門として扱う資料(例:魚類資料、考古資料など)に当てはめて考察することを勧める。また、関連する他の博物館学の科目(博物館概論、博物館教育論など)の内容を併せて確認し、学んでおくとよい。予習・復習あわせて各回あたり約4時間の自己学習を想定している。


第1回 ガイダンス、博物館資料保存総論
 シラバスの記載事項について確認する。博物館資料、資料保存の歴史、資料劣化の要因について解説する。【予習】参考書の第1章を読み、資料劣化の要因について整理しておく。

第2回 博物館資料の保存環境 (1) 温度湿度環境
 温度と湿度、その計測方法、温度湿度の制御について解説する。【予習】参考書の第2章2.1や、化学関係の参考書を読んで、温度湿度の概要について整理しておく。

第3回 博物館資料の保存環境 (2) 光と照明
 光の性質、資料損傷の要因、照明、展示照明手法について解説する。【予習】参考書の第2章2.2を読んで光と照明について調べておく。博物館等を訪れる機会があれば、照明方法に気を付けて見学することを勧める。

第4回 博物館資料の保存環境 (3) 室内空気汚染
 空気汚染の種類と影響、汚染物質の測定と対策、空調設備について解説する。【予習】参考書の第2章2.3を読んで、空気汚染物質(粒子状物質、ガス状物質)について調べておく。

第5回 博物館資料の保存環境 (4) 生物被害
 生物の分類、資料に被害を与える昆虫類、虫害対策、カビとその対策について解説する。【予習】参考書の第2章2.4を読んで、資料に被害を与える昆虫とカビ、それらの対策について調べておく。また、生物学の参考書等で生物、特に昆虫類の分類をまとめておくとよい。カビ対策マニュアルhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sonota/003/houkoku/1211830_10493.htmlに目を通しておく。

第6回 博物館資料の保存環境 (5) 伝統的保存方法
 曝涼、正倉院とその宝物、伝統的な防虫対策について解説する。【予習】参考書の第2章2.5を読んで、曝涼などの伝統的な保存方法や、奈良時代の宝物を伝える正倉院について調べておく。

第7回 博物館資料保存環境の実際 (1) 魚類標本、岩石化石、鉱物標本、昆虫標本、植物標本
 自然史資料(標本)の作り方や保存方法を解説する。【予習】松浦啓一著 2014. 標本学第2版:自然史標本の収集と管理. 東海大学出版会. を読んで、標本の種類や作り方、保存方法についてまとめておくとよい。

第8回 博物館資料保存環境の実際 (2) 横須賀市自然・人文博物館の展示室・資料室の保存環境
 博物館の展示室や資料室を見学し、これまでに学習した資料保存環境の実際を解説する。

第9回 博物館資料の保存環境 (6) 博物館資料の被災防止と救援活動
 地震、火災、水害、犯罪を例にして解説する。特に東日本大震災後の資料の救援活動について詳しく講義する。【予習】参考書第2章2.6を読み、被災した博物館資料の状況と救援方法について調べておく。東日本大震災についても文献等で調べておくとよい。

第10回 梱包と輸送 一次資料と二次資料
 資料の梱包方法と輸送方法について解説する。また、レプリカや模型などの二次資料の作成方法や意義について解説する。【予習】参考書第3章3.3を読み、養生や梱包方法について調べておく。

第11回 ひろがる博物館の役割 (1) 地域資源の保存と活用 ・自然環境の保護
 地域資源(埋蔵文化財、街並み、自然環境など)の破壊、エコミュージアム、ジオパークについて解説する。【予習】参考書第4章を読み、エコミュージアムのしくみについて調べておく。ジオパークについてはウェブサイトで調べるとよい。

第12回 ひろがる博物館の役割 (2) 天神島臨海自然教育園の例
 地域資源の保存と活用の例として、横須賀市自然・人文博物館付属天神島臨海自然教育園を見学する。

第13回 資料の保全
 資料の材質を調べ、状況を把握し、修復・修理する過程を解説する。紙資料や自然史資料の修復・修理を例に挙げる。【予習】参考書第3章3.1と3.2を読み、材質の調査法や修復方法、修復の注意点について調べておく。

第14回 臨時試験および解説・まとめ
 ここまでの内容について臨時試験(60分)を実施する。終了後試験内容についての解説を行い、あわせて質問を受ける。【予習】これまでの講義内容を確認しておくこと。

授業運営

 講義形式を基本とするが、博物館施設の見学と臨時試験を含む。
 1・2回(4月13日)、第3・4回(4月27日)、第5・6回(5月11日)、第9・10回(6月8日)、第13・14回(7月6日)は、湘南平塚キャンパスにて行う。第7・8回(5月25日)は横須賀市自然・人文博物館(横須賀市深田台95)、第11・12回(6月22日)は横須賀市自然・人文博物館付属 天神島臨海自然教育園(横須賀市佐島3-7-3)にて開講する。1限・2限に開講する。詳細は講義で示す。

評価方法

 臨時試験 (授業時間内に実施、80%) とレポート (20%) により評価する。試験はノートと配布資料の持ち込み可(参考書、タブレット端末等の持ち込みは不可)。

オフィスアワー

質問等は以下のメールアドレスに問い合わせること。
kenichirou-shibata@city.yokosuka.kanagawa.jp

参考書

石崎武志『博物館資料保存論』[講談社]2012

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