授業科目

流体力学
Hydrodynamics

担当者

講師   逸見 学
前 金4

単位

2

到達目標

本講義の到達目標は、受講生が①質点と見なせる物体の「力学」から一歩進んで、連続物体の「流体力学」の考え方・扱い方を身に着けること、②気象現象や水の流れのような具体的な現象を理解・解析する手法を身に着けることである。数理・物理学科のカリキュラムポリシーに従い、理学の多元的な視点の獲得のため、質点の力学を連続体力学に拡張・発展させた例として、流体力学を扱う。

授業内容

実際の流体の現象は多体系の問題であり、粘性を考慮したナビエ・ストークス方程式を解くことになるが、その厳密解を求めるのは難しい。一方、一定の仮定や近似的な扱いをすることによって、実用上は、充分な精度で現象を説明・再現できることが知られている。
本講義では、粘性を考慮しない理想流体(完全流体)について行う。この場合、理論体系が比較的わかりやすくなり、解も解析的に示される。

授業計画

各回の講義内容は次のように予定しているが、時間の関係で若干前後する場合もある。
授業計画や事前配布資料を読んだうえで出席することを前提に講義するので、予習として、①各回の該当資料を予め読んでくること、②分からない用語や現象について調べておくことの2点が不可欠である。また、復習としては、講義時に示した理論・知見を、類似の他の現象に当てはめて考察してみることを勧める。特に、身近にある流体の諸現象に関心を持ち、それらがどのようなメカニズムで生じるのか考える習慣を持つことが望ましい。なお、予習・復習合わせて各回あたり約4時間の自己学習を想定している。特に、予習については、早め早めに学習を進めると、流体力学体系の全体像が把握しやすいという利点がある。


01 流体の分類、流体の概念と諸現象
まずシラバスの記載事項について確認する。その上で、流体力学とはどういう学問か?学習の仕方等、流体力学の概要を理解する。地球規模の流体の例として、大気(台風、気流)、海流、地球内部の地殻変動、地磁気と太陽風によるオーロラ等がある。一方、身近な具体的事例としては、水利、航空機の空力特性、風洞実験、プラズマ等の電磁流体がある。過去の事故例として、タコマナローズ橋の崩壊の映像が残っている。一方、風呂の排水は右回りか?左回りか?南半球と北半球で同じか?違うか?についてとか、紅茶をかき混ぜたとき、茶碗の底の中央部分に紅茶の粉が集まるのは何故か?等、流体の現象は身近に沢山あり興味は尽きない。

02 流体場の物理量と圧力について
完全流体では、隣り合った2つの部分が及ぼし合う力は境界面に垂直な力である。完全流体では任意の点における圧力は、全ての方向に等しい値をとる。
流体の運動を論じる量として、流体の速度vとする。vはベクトルであり、3成分は(u,v,w)。物理量として、密度ρ、圧力p、温度T、内部エネルギーE、エントロピーS、・・・のうち独立な変数2つ、通常、独立な2つの変数としてρとpが選ばれる。
結果として、流速(u,v,w)と、2つの物理量の計5つの量が流れの各点で決まれば流れの状態が完全に決まる。
【予習】質点の力学と連続体の力学の視点の違いがどこにあるかを整理しておくこと。


03 ラグランジュの方法とオイラーの方法。
ラグランジュの方法とは、流体を粒子の集まりと見なし、各粒子が時間とともにどう動いていくかを調べる方法である。ラグランジュの方法では、x、y、zは従属変数であり、定常流でも、周囲の風景が次々と変化し、加速度の作用を感じる。
一方、オイラーの方法とは、各瞬間において、空間の各点における流れの有様を調べる方法である。x、y、zは独立変数であり、定常流の場合、加速度は時間の変化でなく、場所の変化(関数)として表現される。
【予習】ラグランジュの方法とオイラーの方法の違いについて事前に調べた上で整理しておくこと。

04 オイラーの連続方程式(Equation of Continuity)(連続の式、質量の保存則)
1次元の連続方程式の導出と、2次元、3次元の連続方程式への拡張(導出)を行う。
次に、オイラーの連続方程式(3次元)の別の導出を行う。その際、ガウスの発散定理を用いる。
【予習】ガウスの発散定理を再確認すること。面積積分と体積積分の変換の意味合いを理解し、整理しておくこと。


05 オイラーの運動方程式(Equation of Motion)
1次元の運動方程式の導出と、3次元の運動方程式への拡張(導出)を行う。次に、オイラーの運動方程式(3次元)の別の導出を行う。その際、ダランベールの原理による力の釣り合いの考え方を用いる。また、ガウスの積分定理を用いる。
【予習】ダランベールの原理による力の釣り合いの考え方を確認すること。ガウスの積分定理を再確認すること。面積積分と体積積分の変換の意味合いを理解し、整理しておくこと。

06 状態方程式(Characteristic Equation)
理想気体の場合、p=RρT/m (p:圧力、T:絶対温度、ρ:密度、m:気体の分子量、R:気体定数) (R=1.99cal/°K=82.1cm3・atm/°K)
・液体の場合は、p=constが成立する。 (p=RρT/mより)
・気体の等温変化の場合は、p∝ρが成立する。 (p=RρT/mより)
・気体の断熱変化の場合は、p∝ρのγべき乗が成立する。 (γ=圧力一定の時の比熱を、体積一定の時の比熱で割った値)
この特性に着目して、ρ=f(p)の形に表すことが多い。これを、状態方程式という。密度が圧力の一義的な関数として表現されていることに注意されたい。こうした流体をバロトロピー流体(barotropic fluid)という。U、v、w、p、ρの5つの量、すなわち流れの状態は、連続方程式(1)、運動方程式(3)、状態方程式(1)によって完全に求められる。

07 流線(stream line)と流れのみちすじ(path line)
流線とは、その上の各点における接線がその点における速度ベクトルvの方向に一致するような曲線をいう。流線の線要素dr (dx、dy、dz)は、ベクトルの向きがvと同じであるから、dx/u=dy/v=dz/wである。これが流線の微分方程式である。
一方、流れのみちすじとは、流線の中の一つの流体粒子が時間の経過につれて移動していく軌跡を示す。流体粒子が時間dtにdrだけ動くものとすれば、dr=v dtであるから、dx/u=dy/v=dz/w=dtとなる。これが流れのみちすじの微分方程式である。流れが定常であるとき、流線と流れのみちすじは一致する。
【予習】流体の密度が一定の2次元定常流において、速度成分が u=a(定数)、v=b(定数)で与えられるとき、流線を求めよ。また、u、v が連続方程式を満たすかどうか示せ。

08 ベルヌーイの定理
ベルヌーイの定理は、オイラーの運動方程式の積分であり、エネルギー保存の法則を表す。なお、積分は流線に沿って行うことが求められる。ベルヌーイの定理は、拡張や条件限定によりいくつかの表記方法があるが、ふつう、ベルヌーイの定理と呼ばれるものは、縮まない流体で、渦なしで、外力が重力の表記の下記である。
p/ρ+|v|・|v|/2+g・z=const  但し、gは重力加速度、zは鉛直上向きの距離。
上記、第二項、第三項は、それぞれ流体の単位質量あたりの運動エネルギー、及びポテンシャルエネルギーを表していることに注意。
【復習】身近な流体の現象を題材にして、ベルヌーイの定理を適用してみよう。どの程度、流体の現象が説明できるか調べてみよう。


09 渦と循環
【予習】渦と循環のそれぞれについて、流体力学での定義を調べ、その違いを確認しておくこと。また、渦輪の3次元的構造を空想するとともに、渦輪の実例を3つ以上リストアップすること。

10 渦定理、ストークスの定理

11 地球の自転とコリオリの力

12 ダランベールのパラドックス

13 レイノルズ数、層流と乱流

14 粘性の効果とナビエ・ストークス方程式

授業運営

講義を中心に行うが、その中で宿題として課題の解答を提出してもらう。解答の提出は、課題を出した次週の講義開始時点とする。講義ではなるべく資料を配布する予定である。

評価方法

課題の解答で評価する。課題は講義内容の流れの一環として果たされるものであり、講義を欠席すると課題そのものが理解できなくなったり、解答できなくなったりすることがあるので、日頃の出席は欠かせない。期末試験は行わない。

オフィスアワー

講義の終了後に捕まえてほしい。

参考書

今井 功『流体力学』[岩波書店(物理テキストシリーズ9)]

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