授業科目

力学
Dynamics 

担当者

講師   齋藤 和之
前 月1

単位

2

到達目標

ファインマンはガリレオを「最初の物理学者」と言った。そのガリレイに始まりニュートンを経てラプラスによって古典力学は完成された。学生がこの古典力学の体系を理解することを到達目標とする。
物理学は自然との対話である。この対話は数式を使って行われる。具体的には、学生は日常身近に起こる様々な現象をニュートン方程式を使って解析し、自然を理解する能力を身に付ける。
本科目は理学部のカリキュラム・ポリシーに従い、物理学の基礎と位置付けられるものであり、質点系の運動を直交座標系、極座標系、回転座標系で解析する方法を身に付ける。また、具体的な力としては、重力、抵抗力、浮力、張力などの力、およびそれらのベクトル的合成力の解析法を身に着ける。ここで学ぶ知識、解析法は後に剛体の力学や電磁気学、基礎量子論を学習するためには必須である。

授業内容

まず学生はベクトル、行列、解析学などの必要な数学的基礎を復習する。古典力学で自然を表現し理解する基本は、何が、何時、何処で、どのような状態であるかを記述することである。「何が」は対象とする物体であり、「いつ」は時間であり、「何処」は位置である。力学的「状態」とは、物体に加わる力と物体の運動量である。そして、これらを関連付けているものがニュートンの方程式である。
授業計画の各項目にあげる身近な物体の力学的「状態」がニュートンの方程式によって解析できることを示す。
特別の教科書は使用しないで学生には講義補助資料(約25頁/回)を提供する。なお教師は「The Feynman Lectures on Physics Vol.1」を参考にした。日本語版を参考書として示した。
昨年度より一限の時間が延びたことを利用し、学生の理解度を高めるため演習の解説などのフィードバックを充実させている。

授業計画

具体的講義内容は以下のリストのように予定している。各週1主題となるように構成した。但し、学生の理解度、時間の関係で若干前後するあるいは変更する場合もある。授業中には講義だけでなく、練習問題を解き、理解度を向上させたいと考えている。
各回あたり約4時間の予習・復習を想定している。講義資料は1週間前にはdotCampusに掲載するのでそれを利用し予習する。予習のポイントは下記の【予習】に示す。講義では高校までの物理教育を大きく発展させ、ベクトル、座標変換、微分方程式を駆使した解析を行う。したがって【復習】に重点を置く。講義時間内に毎回15分程度の「復習、今日のまとめ」の時間をとるともに、各授業主題に復習のきっかけとなる「演習問題」を数問提供し、一部について解法も示す。

各週の授業内容は以下のとおりである。
1. オリエンテーション/物理学の学習の基礎
シラバス記載事項を確認する。物理量を表す単位系、有効数字の科学的表記法を学ぶ。【予習・復習】MKS単位系とは何か国際単位系を予習し、様々な物理量の計測方法と単位系の関係について確認しておく。また「物理と数式」を読みの物理現象を数式で表すことを確認しておく。
2. 力のつり合い
質量と重量の定義などを学ぶ。ベクトルによる力のつり合いを学ぶ。【予習】高校数学で学習したベクトルの加算・減算、ベクトルの内積・外積について再確認しておく。三角関数についても復習して置く。【復習】特にベクトルの加算(合成)は正確な作図が重要である。演習問題を講義中に解説するので自身でも作図してみること。
3. 状態を表す
物理的状態とは、ある時刻での位置、運動量である。位置、運動量ともにベクトル量であり座標系と深く関連する。ここではまず直交座標系について学ぶ。さらに行列によるベクトルの解析を学ぶ。【予習】線形代数学などで学習した行列の演算を復習して置く。【復習】行列は作図に変わるベクトルの表現であり、物理量の代数的演算を可能にする。演習問題を利用し、ベクトル、座標系、行列の関係を復習し、そのいずれの表現でも取り扱えるようにしておく。
4. 近代物理学の誕生
力学の基礎をつくったガリレイ、ケプラー、ニュートンの業績を学ぶ。【予習】講義資料の補足として「潮の満ち引きと万有引力」「円錐曲線の性質」の付録資料を提供したので、これらも読んでおく。【復習】円錐曲線は天体の運動を表す基本方程式であり、最終的にはケプラー問題から導かれるので、その性質を確認し復習しておく。
5. 台車の運動
直線運動、すなわち一次元の運動、を解析する。講義では詳細な解析手順を示す。【予習】第1章で学習した「物理と数式」を復習し運動方程式の立て方を確認しておく。微分形で表したニュートンの方程式を解くための積分法を高校時代の数学教科書で再確認しておく。主要な微積分公式は講義資料中にも記載した。【復習】微積分は力学問題の解析の基本である。各種基本公式を自在に扱えるまで復習しておく。
6. ソフトボール投げと雨粒
放物運動、すなわち二次元の運動、を解析する。さらに抵抗力を含む運動方程式を扱う。付録としてExcelを使った微分方程式の数値解法を示した。【予習】第2章、第3章を復習しベクトルの分解、合成を確認しておく。また第4章で学習した各種の力が加わった系の運動方程式の立て方を復習して置く。【復習】物理学は暗記ではない。講義資料に書かれた演算を自分自身で実行してみること。
7. 水力発電
水力発電を例に仕事、エネルギーとポテンシャルを理解する。【予習】仕事とエネルギーの関係について調査し、エネルギー保存則を確認しておく。「仕事をする」とはどのようなことかを改めて考えておくこと。ダムに蓄えられたエネルギーが各家庭で利用されるまでのエネルギー変換の実態を調査してみる。【復習】電磁気学でも重要な概念であるので、力とポテンシャルとの関係を確認して置くこと。
8. ビリヤード
衝突現象を解析し運動量保存則を理解する。【予習】ビリヤードを思い浮かべ、静止している的球に手珠を衝突させたとき、衝突後にどのような運動をするか考えてみておく。【復習】球面上での反射を解析的に解くことは困難である。講義資料で示した作図による解析法を自身で確認して置くこと。粒子の衝突問題は分子運動論につながる。
9. 人工衛星
中心力による人工衛星の運動を直交座標、極座標それぞれで解析する。ここでは円錐曲線のうちで最も扱いやすい円運動を解析する。【予習】人工衛星の高度、静止衛星の原理などを調べておくこと。円錐曲線の性質について第4章を復習しておくこと。【復習】円錐曲線で表される運動は極座標が便利である。極座標系の運動方程式の解析を、講義資料を参考に自身で行い、極座標による速度・加速度の表現を確認して置く。
10.振り子とバネ
振り子やバネの単振動を解析する。定常的な外力が加わる強制振動、摩擦力による減衰振動も解析する。【予習】各種の力が加わった運動を解析するので、第4章の「運動方程式の立て方」を復習しておく。この時、導出される二階線形常微分方程式の解法を調査して置く。高校数学の指数関数と三角関数の関係を復習しておく。【復習】二階線形常微分方程式の例題を講義資料に示した。講義資料にある補足を参考に自身で解析してみること。
11.梃子とシーソー
梃子で重いものが簡単に動かせることや、回転機構がある場合のつり合いを学ぶ。回転機構のモーメントを学び、回転運動と角運動量を理解する。【予習】シーソーなどを思い浮かべ、回転する機構のつり合いについて調査しておく。第2章で学習したベクトルの外積に関する演算。第9章の三次元座標系について復習しておく。【復習】回転する系のつり合いから重心が定義される。このとき極座標空間での積分を行っている。演算を自身で行ってみること。
12.独楽の運動
独楽を例題として回転する物体の運動、すなわち剛体の力学の基礎を学ぶ。【予習】独楽と類似の運動をするものを調査しておく。第11章で行った極座標空間での積分を復習しておく。【復習】力学的運動は重心の並進運動と、重心に対する回転運動である。力学IIで再度学習することになる。
13.台風は左巻き
台風の運動に現れる見かけの力、コリオリ力を学習する。【予習】第9章で行った直交座標から極座標への変換について復習しておく。また第10章で行った二階線形常微分方程式の解法を復習しておく。【復習】フーコー振り子の解析は力学の総合問題の一つである。自身で解析を追ってみること。
14.古典力学の完成。
ケプラーの法則を解析する。ニュートンはケプラーの法則を解析し古典力学を完成させた。【予習】第4章の円錐曲線の性質について復習しておく。第9章の中心力のもとでの運動方程式について復習しておく。【復習】この問題は「ケプラー問題」と呼ばれる。これを自身の力で解ければ、諸君の古典力学の学習は完成に大きく近づいた。ラプラスの解析力学は力学IIで扱う。

授業運営

全て講義形式による。
受講生はdotCampus上から授業補助資料を1週間前に入手可能である。
各授業においては練習問題として身近な力学現象を取り上げ、解析法を示す。 教師は小テストやレポート形式の課題により理解度を確認する。 課題の模範解答を示し、理解度の向上を図る。最後に、講義全体の総合的な復習とまとめを行う。「演習問題」の中から課題を課す。

評価方法

期末試験は行わない。レポート形式の課題、小テストにより成績を評価する。
各週のまとめとして講義時間内に小テストを行う。講義主題ごとに課題(レポート、宿題)を課す。課題(レポート)は14回程度である。
評価の比率
課題(レポート):90%
小テスト:10%

オフィスアワー

随時、教室で対応するほか、教師あてにメールすれば原則として24時間以内に回答する。教師のメールアドレスはオリエンテーションの際に示す。講義中、講義終了後の質問には即日対応する。
成績に関する問い合わせは教務課を通してのみ応ずる。

参考書

R.ファインマン、坪井忠二訳『力学』[岩波書店(ファインマン物理学(1))]1986

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