授業科目

分析化学(機器分析)
Analytical Chemistry  (Instrumental Analysis)

担当者

准教授 鈴木 健太郎
前 金2
講師   天野 力
前 金2

単位

2

到達目標

本講義の到達目標は、受講生が、物質の情報を知る上で広く用いられる機器分析装置である、質量分析装置・赤外分光光度計・NMR分光計等を用いた分析法について、その原理や装置の仕組みを学習することにより、測定結果から物質の情報を知るための知識を得るだけでなく、測定前に分析結果をある程度推測するための知見を得ることにある。
「分子構造決定法基礎」「分子構造論」の講義を受けていれば、本講義で触れる分析法についての知識が理解の助けになるが必須ではない。また、「分析化学I」「分析化学II」とは相補的な内容を取り扱う。
理学部のカリキュラムポリシーに従い、幅広い教養、コミュニケーション能力、情報処理能力、及び理学の基礎から高度な化学に至る物質科学の知識と技術を修得し、それによって社会の中核として活躍できる人材を育成するためのカリキュラムを作成しており、本講義はその中で、研究活動を遂行する上で重要な機器分析について、基礎から最近の知識を身につける役割を持つ。

授業内容

この講義では、特定の教科書を用いず、毎回、講義中に配布する講義資料を用いる。対象とする測定装置は「質量分析装置」「赤外分光装置」「NMR分光装置」であるが、これに関連性の強い「ラマン分光装置」や「ESR分光装置」等の話題にも触れる。
毎回講義のはじめには、前回の講義の内容を復習し、その上で以下計画に示す内容を講義する。様々な分析法の背後には、物理学にもとづく精緻な理論が存在する。これをすべて理解することは困難であり、その習得は本講義では目指さないが、ある程度背景を理解することで、分析結果を単なる数値としてではなく、奥行きのある情報として理解する素養を身につけることを目指したい。

授業計画

各回の講義内容は、次のように予定しているが、授業の進行状況や受講生の理解度によっては、若干前後する場合もある。各回共通の予習として、以下の計画に示した予習内容について、様々な参考書を利用して整理する。特に、図書館等を利用すると良い。また、すでに様々な講義で触れてきた、「質量分析装置」「赤外分光装置」「NMR分光装置」に関する情報を改めて確認し、その内容を整理する。
復習については、毎回講義の後半で行う小テストの内容について、関連した内容が講義資料のどこに書かれているかを確認し、その内容を自分の言葉でノート等に整理する。さらに、講義資料中の理解できなかった点などをマークし、次回の講義で聞くべき内容として認識する。
なお、予習復習合わせて各回あたり約4時間の自己学習を想定しているが、復習は講義の直後、予習は講義の前日に行うことが効率的である。予習・復習を通じて生じた疑問については、講義中に質問するなどして、できるだけ速くに解消すること。

01. ガイダンス / 質量分析01: 質量分析の歴史・イオン化法
まず、シラバスの記載事項について確認する。さらに、陰極線管の発明から、トムソンによる質量分析法開発に至るまでの歴史や、一般的な質量分析に用いられるイオン化法の原理や得意とする試料の状態について理解する。【予習】物質科学・自然科学の世界において、物質の分子量を知ることの重要性について確認しておく。

02. 質量分析02: 分析法
イオン化した試料を、質量によって分けるために必要な種々の分析法の原理を紹介し、それぞれの特性を理解する。また、前回学習したイオン化法との相性や、新しい技術によって解決された問題を確認する。【予習】電荷を持った粒子が電場中で加速される現象について確認する。

03. 質量分析03: 質量分析によって得られる情報
質量分析法により得られる情報を整理し、他の分析法にはない質量分析法のメリットを理解する。また、ハードイオン化によって生じるフラグメントイオンの生成機構や、特徴的な反応機構を確認し、これらが物質決定に関してもたらす情報を理解する。【予習】これまで受けてきた「分子構造決定法」等の講義資料を参考に、質量分析法で得られるチャートから、質量分析における分析結果がどのようなものであるかを確認する。

04. 赤外分光01: 赤外分光の目的・基本概念(振動と光吸収・基準振動)
分子を、重りとしての原子が、バネとしての化学結合で結ばれた振動子として理解することで、バネに特有の固有振動の考え方を理解する。【予習】バネ振動に関するフックの法則について復習しておく。

05. 赤外分光02: 分子構造と振動
分子の示す様々な振動の種類や、それらの組み合わせによる基準振動の考え方を理解する。【予習】エタノール内部に含まれる化学結合に結ばれた分子が、どのような振動を持ちうるかを考えてみる。

06. 赤外分光03: 実際のIRスペクトル・ラマン分光法
赤外禁制となる振動がありうることを理解する。これまでの知見に基づき、赤外吸収スペクトル中にある分子の情報について、実際のIRスペクトルを参考に理解する。さらに、赤外分光法に相補的な情報を与えるラマン分光法の概要を知る。【予習】水分子と、二酸化炭素分子の双極子モーメントについて整理する。

07. 赤外分光04: 実際の測定
分散型分光計とフーリエ型の分光計について理解する。気体・液体・固体試料を対象にした赤外吸収スペクトルの測定法や、ATR法や顕微IRのような、発展的な測定手段に関する情報を得る。【予習】分子の振動を知ることができる赤外分光であるが、そのような測定を通じて、どのような情報を引き出すことが可能であるか考えてみる。

08. ここまでの内容の復習と中間テスト
「質量分析」および「赤外分光」の内容について、小テストを行う(60分)。講義資料や講義中に作成したノートの持ち込み可。計算のための関数電卓を持参すること。試験終了後に解答は回収し、残りの時間で試験内容についての解説や質疑応答を行う。【予習】これまでの内容を復習し、配布した資料のどこに、どのような情報があるかを整理するとよい。

09. 核磁気共鳴(NMR)01:NMR分光法の原理・化学シフト
磁気共鳴現象の原理・機構から、核種によってことなるNMRが得られることを理解する。さらに、同一核種によっても、分子内の原子の置かれた環境によってわずかにピークシフトすること(化学シフト)を理解する。【予習】有機化学や構造決定などの講義の内容を思い出し、NMRはどのような分析法であったかを整理する。

10. 核磁気共鳴(NMR)02:化学シフトとスピン結合
分子内で近隣にある核スピンどうしが、化学結合を通じて相互作用することで起こるスピン結合が生じる原理と、それによって生じるスペクトルの変化について理解する。【予習】NMRによる構造決定にあたって、ピークの分裂がどのような情報を伝えていたかを整理する。

11. 核磁気共鳴(NMR)03:NMRスペクトル
これまで得てきた情報を利用して、分子構造からNMRを推測できることを学ぶ【予習】化学シフト・カップリング・積分強度のような、NMRスペクトル解析を行う上で重要となる用語について整理する。

12. 核磁気共鳴(NMR)04:NMRの展開
温度可変NMR、多核NMR、二次元NMR、NMRイメージングといった、様々なNMR測定法を理解する。また、フーリエ変換NMRの概要について学ぶ。【予習】いわゆるMRIとは、どのような測定か調べてみる。

13. 新しい分析法
これまで講義で触れた分析法以外の、新しい分析法に触れ、現代科学は物質のどのような情報まで知ることができるようになったかを理解する。【予習】これまで用いてきた分析法の限界について整理する。

14. ここまでの内容の復習と中間テスト
主にNMRの内容について小テストを行う(45分)。講義資料や講義中に作成したノートの持ち込み可。計算のための関数電卓を持参すること。試験終了後に解答は回収し、残りの時間で試験内容についての解説や質疑応答を行う。さらに、本講義全体に関する復習を行う。

授業運営

すべて講義形式による。授業運営の詳細については初回に説明するが、毎回講義資料を配布し、それに基づいて授業を行う。授業時にはパワーポイントを用いる。
毎回授業の最後に、授業に関連した小テストを行い、解答を回収する。講義中疑問に思った点については、授業の最後に配布・回収するコメントシートに記載すること。講義中の質問は歓迎する。
前半後半二回の中間テストとその解説を行い、講義をただ聴くだけでなく、実際に手を動かすことで、より深い理解を目指す。

評価方法

授業の基本点を30点とし、期末試験の結果を70点とする。基本点には、講義中に行う小テストや中間テストの採点結果や、課題・コメントの内容によって加算する。出席状況は成績の評価には加えない。期末試験には、講義資料、自分で記述したノートの持ち込みを認める。また、計算ための関数電卓を持参すること。スマートフォン等の計算以外の機能を持った端末を電卓の代わりに用いることは認めない。
定期試験の解答内容についての問い合わせは、試験後個別に受け付けるので、今後の学習に活用して欲しい。

オフィスアワー

適宜受け付ける(ただし、対応できない場合もある)。2号館235号室(内線2716)まで。なお、質問や感想は講義後にもその場で受け付ける。メールも可。

使用書

講義中に配布する資料に基づいて講義する。予習、復習等については、種々の関連書を用いること。

参考書

L.M. Harwood, T.D.W. Claridge,Introduction to Organic Spectroscopy,Oxford Sci. Pub.,2011
分析化学に関しては、多くの良書が出版されているので、図書館などで実際に手に取り、自分に合った教科書を見つけることをおすすめする。本講義の内容は、以下の教科書の内容が近いので、興味があれば、目を通してみると良いかもしれない。

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