授業科目

計算機化学
Computer Chemistry

担当者

教授   松原 世明
後 火1

単位

2

到達目標

本講義では、受講生が、①量子化学計算の計算手法の基礎を理解すること、②実習を通して量子化学計算を実践する能力を身につけること、③計算結果を可視化することでこれまで学んだ分子構造や化学反応をより現実的に理解すること、を到達目標とする。理学部化学科のカリキュラムポリシーに従い、物理化学系の科目についても基礎から応用まで体系的に修得できるようカリキュラムが編成されており、本科目はその中で、現代では一般的になった量子化学計算の実践的な技術を身につけることを目的とする。物理化学I(量子化学)では、必修科目である基礎物理化学Iで学んだ量子化学の基礎を基盤に量子化学計算の基礎理論を学ぶが、本科目では、実習を通して量子化学計算をより実践的に学ぶ。物理化学I(量子化学)と合わせて履修することでより理解が深まる。

授業内容

量子力学に基づいた量子化学計算は、化学事象を支配している分子の性質や反応の解析に有効な手段である。近年、コンピュータの発達と計算ソフトの開発により、量子化学計算は誰でも容易にできるようになった。化学の分野において、量子化学計算は必要不可欠な研究手段となっている。量子化学計算プログラムによる計算の実践とグラフィックソフトによる可視化の実習を通して量子化学計算の基礎を学ぶとともに、これまで学んだ分子の性質や化学反応の理解を深める。

授業計画

1. まず、シラバスの記載事項について確認する。そして、計算化学の応用例から化学における近年の計算化学の役割を理解する。
2. 計算手法1
分子軌道法の種類とab initio 分子軌道法の概略を掴んだ後、電子相関を考慮しないHartree-Fock法と分子軌道とエネルギーを決定するSCFの方法について学ぶ。
3. 計算手法2
電子相関を考慮しないHartree-Fock法に続き、電子相関を考慮した配置間相互作用の方法および摂動法と密度汎関数法について学ぶ。
4. 基底関数
分子軌道を表現する際に基底として用いられる関数の種類と計算精度について学ぶ。
5. ポテンシャルエネルギー曲面と定常点
ポテンシャルエネルギー曲面における平衡構造と遷移状態を理解し、それらの区別の仕方と求め方について学ぶ。

次回以降の実習では実際に量子化学計算を行う。計算レベルを設定するには計算手法と基底関数の理解が必要であり、分子の構造最適化では定常点の理解が必要である。これまでの講義内容を十分に復習しておくこと。

6. Gaussianの使い方とMoldenの操作方法
Z-matrixによる分子の作成の仕方、量子化学計算プログラムGaussianによる計算の仕方、計算結果を可視化するソフトMoldenの操作方法を学ぶ。

以降の実習で必要な基本操作であるので、ノートにまとめ復習すること。

7. 構造最適化1
アクリロニトリル、無水マレイン酸の分子を作成して構造最適化する。計算の後、初期構造と最適化構造の構造パラメータとエネルギーを比較する。
8. 構造最適化2
グアニンと水素結合して塩基対を形成する核酸塩基のシトシンには、互変異性体が存在する。シトシンとその互変異性体を最適化構造し、相対エネルギーを求めて安定性を比較する。

分子の構造最適化は、次回以降必須となるので、作業プロセスを復習しておくこと。

9. 分子軌道計算1
エチレンとホルムアルデヒドの分子軌道を計算し比較する。電荷や双極子モーメントも求める。
10. 分子軌道計算2
ベンゼンとピリジンの静電ポテンシャルマップを作成し比較してみる。シクロへキセノンの分子軌道を計算し求核攻撃を受け易い部位を調べる。
11. 振動数計算
酢酸の振動数計算をして基準振動モードと振動数を確認する。エチレン、フルオロエチレン、ビニルアミンの振動数計算をし、振動数が置換基によってどのように変化するか調べる。

次回以降は、これまでの応用計算である。遷移状態の構造最適化は実習の中では初めて登場する。第5回の講義内容を復習しておくこと。また、遷移状態の確認に必要となる振動数計算、エネルギープロフィールを求めるのに必要な相対エネルギーの求め方を復習しておくこと。

12. 化学反応の計算1
二酸化炭素の水和の反応について、CO2とH2Oの1:1の反応経路の計算をする。
13. 化学反応の計算2
二酸化炭素の水和の反応について、CO2とH2Oの1:2の反応経路の計算をする。
14. 化学反応の計算3
二酸化炭素の水和の反応の計算のデータ整理をする。二つの反応経路の構造とエネルギープロフィールを比較し違いを考察する。

 講義、実習とも理解を順に積み上げていく内容になっており、前回までの内容は修得済みのこととして進める。また、実習については、作業を授業時間内に円滑に進めなければならない。4時間の自己学習の中で、講義はもとより、実習については作業を想定した予習、復習を行うこと。

授業運営

1 - 5回は、講義室で講義を行う。6 - 14回は、端末室のLINUXで量子化学計算の実習を行う。量子化学計算プログラムは、LINUX版GAUSSIAN09、可視化ソフトはMoldenを使用する。

評価方法

レポートにより評価する。

オフィスアワー

金曜日の13:30以降(セミナーや会議等の時間を除く)、6号館219室。なお、質問などは講義後にもその場で受け付ける。

使用書

講義資料を配布する。

参考書

P. W. Atkins、J. de Paula、R. Friedman『アトキンス 基礎物理化学(上) 分子論的アプローチ 第2版』[東京化学同人]2018
J. B. Foresman、Frisch『電子構造論による化学の探究 第3版』[ガウシアン社]2015
平尾 公彦、武次 徹也『新版 すぐできる 量子化学計算ビギナーズマニュアル』[講談社]2015
上記以外に随時紹介する。

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