授業科目

生命科学の基礎
Basics of Life Science

担当者

講師   河合 忍
前 水3

単位

2

到達目標

 生命科学は、現代社会において必要不可欠な基礎科目であり、教養教育のカリキュラムポリシーに従い基礎科目として文系、理系をとわず重要科目として位置づけられている。本講義は受講生が単に基礎知識としての教育のみならず、本学の教育理念に照らして、急速に進歩する生命科学の最新知識とそれらを理解するために必要となる普遍的な基礎領域の博物学、生物学、化学、物理学を踏まえた学際的な現代生命科学の理解力を身につけることを目標とする。具体的には、新聞、ニュース等で紹介される科学分野の特に生命科学における発見や研究成果を特殊な専門領域ではなく、一般常識として専門知識がなくても理解できる基礎学力の習得を目標とする。特に、生命とは何か、無生物と生物の違いを理解し、生命進化の流れと生物多様性を理解するために、遺伝情報やその仕組みに関わるDNAとは何かを理解するとともに、現代社会における生命科学の役割を把握することを到達目標とする。

授業内容

 生命科学の進歩は目覚ましく、近年話題となっているiPS細胞など再生医療の分野や癌治療、など医学、薬学、生物科学、のみならず一部はDNA鑑定をはじめとする社会的判断や役割に関わる諸問題や自然保護や生物多様性条約など、社会的問題とも関連する幅広い分野となっている。そこで、これらを理解し、高等教育における常識を身につけ、様々な生命科学に関する内容を理解できる基礎知識をトピックス形式で紹介しながら講義の内容によっては、映像による視覚的情報を活用した内容となる。特に、ノーベル賞受賞者の研究は洗練されたものが多いので、ニュースで紹介される内容を講義に織り込みながら分かりやすく解説する。

授業計画

 各回の講義内容は以下のように予定しているが、最新の生命科学や時々刻々と発見されるトピックスも可能な限りとりあげたいと考えている。予習に関しては、予習としてテキストを読んだ上で出席していることを前提に講義するので、各回の該当ページを予め読んでくること。不明な用語などを調べておき、そのうえで生じた不明な点や疑問は講義毎に回答する用紙に疑問、質問として提出すること。提出された疑問や質問については次回の講義冒頭に、全体説明として受講者全体が共有できるように解答する。また、復習としては、テキストは勿論のこと参考資料として講義ごとに配布するプリントを活用し、講義毎に講義のポイントを解説するのでノートにまとめて整理すること、また、講義はそれぞれ関連する回の講義もあり関連付けた理解を復習を通して整理するとよい。予習、復習合わせて各回4時間程度の学習を想定している。尚、関連のある講義については、その都度講義内で説明する。

1 ガイダンスと全14回の概要(身近な生命科学)
まず、シラバスの記載事項について確認し、全体の概要の説明を行う。
高校の教科書レベルの知識でも理解できる身近な生命科学を題材に、化学、物理学の知識を含めた関連を紹介する。 
2 生命科学以前の科学(アリストテレス、博物学)
予習として古代ローマにおける自然観と自然科学の基礎を学んでおくとよい。自然科学の始まりから生命科学へと発展する科学史と成り立ちについて講義する。
3 博物学者 南方熊楠
生命科学は博物学にさかのぼり、博物学者で有名な南方熊楠にスポットを当てる。
予習として生物学以前の学問として博物学を調べて置くと良い。動物、植物、菌類、微生物といった生物以外にも鉱物や天文学、民俗学、宗教学など、熊楠の業績と共に解説する。
4 粘菌とは? 
動物と植物の細胞の違いを予習としてまとめて置くこと。
南方熊楠が生涯研究した粘菌という不可思議な生物について紹介し粘菌の最新研究を通して動物、植物の特徴についても比較、理解する。
5 生命の共通性(DNAとは何か)DNAの2重らせん発見 
地球上に生活圏のある生物は全て遺伝情報としてDNAを用いて生命活動を営んでいる。生物共通のDNAとは何か、DNAの構造を解き明かしたワトソンとクリックの2重らせんモデルの発見に焦点を当て遺伝情報の仕組みを理解する。
予習としてDNAの構造を理解しておくとよい。

6 細胞の機能とセントラルドグマ(遺伝情報の流れ)
生命体の基本単位は細胞であり、細胞はDNAの遺伝情報により生命活動を営む。オルガネラの機能を理解しDNA、RNA、タンパク質という遺伝情報の流れと意味について講義する。予習としてDNA、RNA、タンパク質がどの様に生体の中で作られるかまとめておくとよい。
7 地球環境の成り立ち(月の誕生)
生命は地球の環境と密接に絡みながら進化し現在に至っている。地球の誕生と生命の誕生には月の誕生と存在が大きくかかわっている。地球環境と月の誕生のなぞについて講義する。予習として潮汐の満ちひきの分けを考えると良い。
8 キャリー・マリス(PCRの原理とは)
DNAによる遺伝子解析やDNA鑑定、遺伝子診断、生物種の保存などDNA解析における格段の進歩もたらしたのがPCR法である。PCRの基本原理を開発した奇想天外な研究者キャリー・マリスの発想と共にPCRを解説する。予習はDNAの複製を勉強しておくこと。
9 PCRとDNA鑑定
PCR法の具体的活用について紹介する。インフルエンザ感染の検査など身近に活用される解析から、犯罪の鑑定や身元不明の捜査など紹介する。予習としてPCR法の復習をしておくこと。
10 クニマス発見のニュースから学ぶ絶滅危惧種
絶滅危惧種の定義と再発見された絶滅種の復活について紹介し環境破壊の実例と種の保全について講義する。予習として絶滅した生物には例えば、どのような生物がいるか調べて置くこと。
11 特別天然記念物アホウドリの絶滅宣言と自然保護 
1949年絶滅宣言が出されたアホウドリ。人間による環境破壊と一人の研究者による保護活動から環境問題を学ぶ。予習として前回のクニマスが絶滅しなかった理由を考えておくこと。  
12 クローン技術と万能細胞(ES細胞からiPS細胞へ) 
生命の謎とされる分化と若返り(万能性)について解説する。1つの受精卵が持つ能力と再生医療の研究つながる、ジョン・ガードンのクローンガエル誕生からiPS細胞の研究への流れを解説する。予習として、一般的に「クローン」とはどのような意味か調べて置くこと。 
13 再生医療とiPS細胞 
ノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授の研究と今後の再生医療の問題点や最新の研究について紹介する。予習として「クローン生物」と呼ばれるプラナリアは他のクローン生物ではない生物と何が異なるか調べておくこと。  
14 プログラムされた細胞死(Apoptosis) 
形態形成の陰にはプログラムされた細胞死という積極的な細胞死がある。様々な例をまじえてアポトーシスの意義と癌とアポトーシスについて解説する。予習としてアポトーシスとネクローシスの違いをまとめておくこと。 
 

授業運営

 本科目は、本科目は予め登録した上で履修する科目である。第一回の講義には科目の説明も行うので必ず出席すること。
 講義には指定の教科書「自然科学のとびら 生命・宇宙・生活」IKコーポレーション出版を使用するので各自履修を決めたら用意すること。補足資料としてプリントを講義ごとに配布することもある。また、講義内容は多岐にわたり、指定する教科書以外の内容も含む事が生じるがその場合も適時プリントを用意する。
 講義前予習は指定する教科書を用いて行い、講義時間に不明な点や新たな疑問や質問は講義ごとに提出するなど解答用紙に記入すること。講義はできる限り、ビデオ、DVD、など映像を活用して解説する予定である。講義中に学生諸君に質問、回答を求めるので積極的意見を歓迎する。
 講義中の私語は慎むこと。私語や講義に無関係の作業(スマートホンなど操作するなど)を行う場合注意されても指示に従わない場合はその回の出席は無効とする場合もあるので注意すること。

評価方法

 評価は定期試験(70点)、講義毎に提出する小テスト(30点)の総合評価として採点する。基本的には記述の試験で評価するが講義毎に解答用紙を提出してもらいその内容を評価に加える。前回の講義の内容の解説を次回の講義で行うので、理解の確認をすること。尚、講義の質問は、講義ごとに提出する解答用紙に書き、質問を受け付けるので、講義時間内に質問できない場合は解答用紙を活用するとよい。欠席は4回以上超過した学生は定期試験の資格を失うので注意すること。

オフィスアワー

(講義日 6号館 講師控室)水曜日の講義修了後に質問を受け付ける。メールによる連絡は必要な場合はガイダンスの第一回において紹介する。

使用書

溝口 元、河合 忍 共著『自然科学のとびら  生命・宇宙・生活』再版[アイ・ケイ  コーポレーション]2017年

参考書

ジェイムズ D. ワトソン 『二重らせん』[講談社]1986年
長谷川博『アホウドリに夢中』初版[新日本出版社]2006年
キャリー・マリス『マリス博士の奇想天外な人生』2版[早川書房]2000年

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