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 授業科目
 Course Title
社会経済学
Political Economy
 担当者
 Instructor
講師   岸見 太一  後学期 水曜日2時限-水曜日3時限
 単 位
 Credit
4

関連するディプロマポリシー Related Diploma Policy
自立した良識ある市民としての判断力と実践力/Judgment and practical ability as an independent citizen of sound sense
時代の課題と社会の要請に応えた専門的知識と技能/Expert knowledge and skills to address the issues of the age and the demands of society
 
到達目標
本講義の到達目標は、受講生が、①貧困と不平等に関する現代正義論的な考察と経済学的な考察の接点と相違点について理解すること、②貧困と不平等に関わる様々な論点を現代正義論の理論を用いて考えることができるようになることである。
《他科目との関連性》
 本講義は経済学部の学生を主に念頭に置いているが、経済学の専門知識を特に前提としていない。また政治哲学や現代正儀論についても予備知識を前提していない。したがって、他学部学生も含めて、貧困や不平等の問題や正義論に関心のあるすべての学生の受講を歓迎する。

 
授業内容
この講義では貧困と不平等という現実世界における重大な経済的課題を、哲学の一分野である現代正義論の観点から考察します。わたしたちはいまパンデミックという世界史的な事態に直面しています。今年の講義では、この事態を現代正義論の観点から受講生のみなさんと一緒に考えることも行ってみたいと思います。
 講義の内容は三部構成です。第一部(第2回~第8回)では貧困・不平等について18世紀から19世紀の思想史を学びます。第二部(第10回~第15回)では、感染症対策と入国管理による移動の制限に関わる正義論における様々な論点を考察します。第三部(第17回〜24回)では、貧困と不平等に関わる現代正義論の代表的な理論を学びます。
 本講義では期末レポートの他に、オンデマンド講義で得た知識を元にした400字レポートを2回執筆し、受講者同士で相互評価活動をすることが求められます。この活動を通じて、社会問題を自分の視点で分析する能力を培います。活動の詳細については初回の動画にて説明します。
 
授業計画
1 ガイダンス
講義の内容と進め方、評価方法などについて確認します。そのうえで、現代正義論とはどのような学問であり、どのような意義があるのか、経済学と正義論の接点は何かを概説します。

【第一部】貧困・不平等の思想史
2 ダニエル・デフォー:18世紀の<グローバル経済>と<感染症>
 『ロンビンソン・クルーソー漂流記』で有名なデフォーの小説を題材に、イギリスにおける富の蓄積を支えた植民地経済と、当時の感染症観を論じます。
【予習】配布資料を読んでおく(以降の回も同様)。
【復習】18世紀の大英帝国植民地の経済構造と現代のグローバル経済の構造の類似点と相違点を考えてみる。
3 アダム・スミス(1):市場論と18世紀の大英帝国
近代経済学の祖と呼ばれるスミスは、経済だけでなく哲学・法・歴史を総合して社会を論じています。(1)ではスミスの思想の歴史的な位置づけを説明します。
4 アダム・スミス(2):先駆的平等主義者としてのスミス
(2)では『道徳感情論』におけるスミスの議論に焦点をあて、スミスが自由放任主義者ではなく先駆的な平等主義者であることを、彼の貧困像を中心に論じます。
【予習】これまでの高校や大学での授業において、「神の見えざる手」などのスミスの議論がどのように論じられていたかを確認しておく。
【復習】スミスの<共感>についての議論と貧困の捉え方の特徴について整理する。
5 トマス・マルサス:救貧法反対論
18世紀末から19世紀初頭における貧困者救済の是非をめぐる論争において、貧困は自己責任であると論じたマルサスの議論を論じます。
6 ジェレミー・ベンサム:功利主義と社会改革
19世紀イギリスの社会改革を先導し、近代的な公衆衛生政策にも大きな影響を与えたベンサムの功利主義の思想を論じます。
【復習】功利主義の3つの特徴と、貧困・不平等論における功利主義の意義と限界についてまとめてみる。
7 J・S・ミル:19世紀の自由主義と女性・人種
 ミルの議会制民主主義と女性参政権擁の護論及びインド論を概観することを通じて、19世紀の自由主義における女性と非白人の地位の問題を論じます。
8 大英帝国内の人の移動・感染症
 第Ⅱ部への橋渡しとして、19世紀の大英帝国内における労働者の移動とコレラ流行対策を概観します。
【復習】19世紀における女性・非白人の地位の問題は現代において解消されているかどうか自分の考えをまとめてみる。
※【課題1・2】:400字レポート①と受講者による相互評価活動 
9 400字レポート①の講評

【第二部】移動制限とリスク配分の哲学
10 Covid-19の流行と移動の制限
 Covid-19に伴って実施された移動制限政策を概観します。
11 移動を制限する諸政策
 感染症対策としての隔離政策や入国管理政策がどのように実施されているかを概観します。
【復習】国家が危険性への対処を名目として隔離や入国管理政策を実施することに対する自分自身の意見をまとめる。
12 移動制限とリスク配分
 危険性への対処のために移動の自由や身体の自由を制限することの正当性について哲学的な論点を論じます。
【復習】リスクと不確実性はどのように区別されるか確認する。
12 家事移住労働者のグローバルな移動
 家事移住労働者のグローバルな移動を事例としてリスク配分の問題を考えます。
13 外国人労働者の一時的な受け入れ
 職業と滞在期間が制限する一時的な外国人労働者受け入れとしての地位の正当性についての哲学的な論点を論じます。
【復習】日本の外国人労働者に関する記事を見つけ、それに対する自分の意見を授業をふまえてまとめてみる。
14 移動の自由はなぜ重要か
 現代正義論においては移動の自由をめぐる論争が存在します。論争において動の自由の重要性を強調するジョセフ・カレンズの国境開放論を論じます。
15 移動の自由はどのくらい重要か
 国境開放論とは反対に、外国人の入国や滞在を国家が拒否することは正義に適っていると主張する国境閉鎖論を概観したうえで、論争の意義を論じます。
【復習】国境開放論と国境閉鎖論の一致点と対立点についてまとめてみる。
※【課題3・4】:400字レポート②と受講者による相互評価活動 
16 400字レポート②の講評

【第三部】貧困・不平等の正義論
17 ジョン・ロールズ(1):原初状態の論証と正義の二原理
20世紀の正義論を代表する理論家であるロールズは平等主義的な所得分配政策を擁護しました。彼の議論でもっとも有名な原初状態の論証と正義の二原理を学びます。
18 ジョン・ロールズ(2):自己尊重の社会的基盤と財産所有のデモクラシー
ロールズの正義の二原理は、社会のそれぞれの成員が自己尊重を抱くことができる制度的基盤を保障するものであることと、理想的な制度構想として提示された<財産所有のデモクラシー>について論じます。
【復習】生まれながらの才能についてのロールズの議論を復習し、それに対する自分の考えをまとめる。
19 ロバート・ノージック:リバタリアニズム
個人の財産権を強力に擁護し、ロールズの平等主義的議論を正面から批判した、ノージックのリバタリアニズムを学びます。
【復習】ロールズの財産所有のデモクラシーは、福祉国家資本主義とどのように異なるかをまとめる。また、ノージックの権原理論とロック的但し書きの議論を復習し、彼の立場からすれば現実の貧困と平等の問題はどのように捉えられるかを考える。
20 アマルティア・セン(1):貧困と不平等の測定と情報的基礎
ノーベル経済学賞受賞者であると同時に哲学者でもあるセンの議論を論じます。まず現実世界における貧困と不平等を測定の仕方についての彼の議論を確認します。
21 アマルティア・セン(2):ケイパビリティアプローチ
貧困と不平等の測定において用いられるケイパビリティアプローチとはどのようなものであり、どのような利点があるのかを論じます。
【復習】ケイパビリティアプローチは、所得アプローチや厚生アプローチに比べてどのような利点があるとセンが考えているかをまとめる。
22 アマルティア・セン(3):公共政策と貧困・不平等
経済学者であるセンは現実世界における貧困問題についても多くを論じています。ここでは、途上国における飢饉の原因と、飢饉の解決における公共的活動の重要性についてのセンの議論について学びます。
23 アイリス・ヤング:集団と貧困・不平等 
不平等は個人の間だけではなく社会集団の間でも生じます。男女間や人種間の不平等についてのアイリス・ヤングの議論を学びます。
【復習】飢饉の原因についてのセンの議論をまとめる。またヤングが社会集団をどのように捉えていたかを、バスを待つ人びとの例を使いながらまとめる。

24 全体のまとめ
 
授業運営
この授業はオンデマンド動画配信で行います。
各回の資料と動画視聴方法をはじめ、Teams上ですべての連絡を行います。動画は週に二回配信します。配信日程の詳細は初回時(10月2日(金)予定)にお知らせします。

 
評価方法
400字レポートとリフレクションシートの提出35%、他の受講生の400字レポートの相互評価活動への参加35%、期末試験(オープンブック方式)30%。さらに毎講義後のコメントシートへの記入に対して加点を行うことがあります。
 
オフィスアワー
講義への質問は毎回のコメントシートで受け付けます。個別の相談はメールで受け付けます(pt121390cd@jindai.jp)。
 
使用書
教科書は使用しません。
参考書
サミュエル・フライシャッカー(中井大介訳)『分配的正議論の歴史』[晃洋書房]2017年
ウイリアム・H・マクニール(佐々木昭夫訳)『疫病と世界史(下)』[中公文庫]2007年
美馬達哉『感染症社会:アフターコロナの生政治』[人文書院]2020年

 
 
 
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