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 授業科目
 Course Title
社会思想史
- 民主政治(デモクラシー)とは何か -
History of Social Thought 
 担当者
 Instructor
講師   定森 亮  後学期 水曜日3時限
 単 位
 Credit
2

関連するディプロマポリシー Related Diploma Policy
自立した良識ある市民としての判断力と実践力/Judgment and practical ability as an independent citizen of sound sense
国際的感性とコミュニケーション能力/International sensibilities and communication capabilities
時代の課題と社会の要請に応えた専門的知識と技能/Expert knowledge and skills to address the issues of the age and the demands of society
 
到達目標
 今日において民主政治(デモクラシー)は唯一の「正しい」政治体制として考えられる傾向がある。しかし、18世紀までの多くの思想家たちは、むしろ民主政治は、各人が自己の利益のみを追求することで無秩序と騒乱の原因になると考え、それが容易に衆愚政治へと転化してしまうことを危惧した。本講義では、受講生が、①フランス革命以降、現代に至るまでの歴史を学んだうえで、民主政治が抱える問題を批判的に考察すると同時に、⓶現代においてなおも共有しうる民主政治の価値がどこに存するのかを考えていくことを目標とする。
 
授業内容
 本講義は、16世紀初頭のヨーロッパでの宗教改革から21世紀に至る歴史を、民主政思想の発展の観点から明らかにすることを試みる。この民主政思想の歴史は、言論の自由、経済的平等、社会的正義、国際秩序等の評価を巡って、個々の時代の思想家たちが、それぞれに引き受けた問題に対する批判的な応答として描き出されることになる。
 
授業計画
 各回の講義内容は、次のように予定しているが、時間の関係、あるいは学生の関心に応じて若干変更する場合もある。
 講義の予習としては、教科書の当該個所を予め読んでくることが必要になる。また、思想は、自らが考えることが重要な意味をもつ。したがって、復習としては、受講者が各論点に関する自分の考え、疑問点などを書いてまとめておくことが、自らの独自な考えを追求し、洗練させるのに役立つ。授業中に関連する参考文献も紹介するので、それらを読むと授業内容の理解がいっそう深まる。以上、予習・復習合わせて各回あたり約4時間の自己学習を想定している。

1.ガイダンス/民主政治とは何か
 シラバス記載事項の確認。近代ヨーロッパにとっての民主政の模範が、プラトン、アリストテレスが生きた古代ギリシアに求められたことの意味を明らかにすると同時に、なぜ近代社会において、その再現が困難であると考えられたかの理由を考える。
2.ハンナ・アーレント『革命について』におけるフランス革命の評価
 近代社会において、「デモクラシー(民主政治)」という言葉が肯定的な意味をもつきっかけとなったのは、18世紀末頃のアメリカとフランスの革命以来である。本講義では、20世紀最大の政治思想家の一人、アーレントが、二つの世界戦争の反省の観点から書いた著作『革命について』におけるフランス革命評価を学ぶ。
3.ハンナ・アーレント『革命について』におけるアメリカ独立革命評価
 アーレントに従えば、身分制社会と貧困からの解放という性格をもったフランス革命に巨大な暴力が伴わざるを得なかったのに対して、比較的に富の平等が実現していたアメリカ独立革命では、むしろ平和裏に憲法制定を実現した。その基礎にあったアメリカ人の自治の経験に関する、アーレントの評価を学ぶ。
4.マキァヴェッリによる宗教の政治的利用
 マキァヴェッリは、同時代である16世紀のキリスト教の教会制度を批判すると同時に、当時のイタリアが直面したフランスやスペインといった隣国の列強による侵略から祖国を防衛するために宗教を政治的に利用しようと試みた。そこでのマキァヴェッリの本当の意図が何であったのかを分析する。
5.宗教改革とヨーロッパ世界の変容
 宗教改革は、ラテン語で書かれた聖書が俗語訳される契機となったが、近代ヨーロッパにおいて、それが言論の自由の基礎となり、後の政治体制に影響を与えた。また、16世紀ルネッサンスの時代に再興したのが古代ギリシア・ローマの文化だった。本講義では、出版・印刷技術の発展、そして宗教的世界観から世俗的世界観への変容が、どのようにして近代社会の基礎を次第に準備していったかを学ぶ。
6.ホッブズにおける主権国家の設立と内乱の解決
 制御し難い人間の情念を国内対立の原因に見定め、内乱期のイングランドに平和と秩序をもたらすために、絶対的な武力が不可欠と考えたホッブズの思想を学ぶ。
7.ジョン・ロックにおける名誉革命体制の肯定と宗教的寛容
 1688年の名誉革命以降の時代に、国家の基礎を、神の権威ではなく、公民の合意に求める契約論を提案し、後の民主政理論の原型を作ったロックの思想を学ぶ。        
8.マキァヴェッリとモンテスキューにおける古代ローマ史分析の相違
 マキァヴェッリが生きた16世紀からモンテスキューが生きた18世紀にかけてヨーロッパでは、富に関する学問が次第に洗練されて行った。本講義では、古代ローマにおける富の不平等の問題という同一の主題に関して、マキァヴェッリとモンテスキーが展開した分析の相違の理由を明らかにする。
9.モンテスキューとヒュームにおけるローマ共和政の滅亡の原因に関する解釈の相違
 モンテスキューとヒュームは、近代社会における世界商業の認識を微妙に異にしたが、その違いが、古代ローマ共和政の滅亡に関する分析にどのように反映されているかを明らかにする。
10.アダム・スミス『道徳感情論』から『国富論』への展開
 スミスは、近代経済学の基礎となる『国富論』(1776)を書く以前に、『道徳感情論』の著者として知られたいた。本講義では、この時代において、なぜ経済学が道徳学、法学と切り離しえなかったのかを学ぶ。
11.アダム・スミス『国富論』における経済的自由の体系
 スミスの分析を通じて、自律的な経済活動の場としての市民社会が理論的に定義されたが、本講義では、スミスの向き合った問題と時代背景、その歴史観を学ぶ。
12.ジャン・ジャック・ルソー『社会契約論』における「一般意思」と民主政治の理論
 ルソーの思想は、その死後のフランス革命において影響力を持ったが、その文明批判の観点と、前提とを学ぶ。
13.マルクスの資本主義批判、トクヴィルによるアメリカの「デモクラシー」評価
 マルクスは、革新主義の代表として、トクヴィルは保守主義の代表として見なされる思想家であるが、両者は、民衆による政治参加、つまりは、各々の側面から民主政治がもちうる価値を肯定している。本講義では、各々の思想家が考えた民主政治の姿を、その時代的、社会的文脈を考慮した上で明るみにし、受講生一人一人が、自分たちが生きる社会、世界の在り方、あるべき姿を考える。
14.総論 民主政治とは何か。 
 これまで扱ってきた問題を総括すると同時に、私たちが21世紀に向き合うべき具体的問題を複数提起する。そこから、受講生各自が、いかなる点で社会との接点をもち、そこで活躍することができるのか、自らの問題として引き受け、考える。

 
授業運営
 講義形式で行う。講義中の質疑応答は、時宜を見計らって受け付ける。

【使用ツール】 Teams
 
評価方法
成績は、2回のコメントカード(30%)と2回のレポート(70%)で評価する。
 
オフィスアワー
 質問や指摘は、授業終了後にその場で受け付ける。
 
使用書
坂本達哉『社会思想の歴史-マキァヴェリからロールズまで』[名古屋大学出版会]2014

参考書
ハンナ・アレント『革命について』[筑摩書房(ちくま学芸文庫)]1995

 
 
 
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