[前へ戻る]
   

 授業科目
 Course Title
社会思想史
- ヨーロッパ文明の歴史における社会科学の形成 -
History of Social Thought 
 担当者
 Instructor
講師   定森 亮  前学期 水曜日3時限
 単 位
 Credit
2

関連するディプロマポリシー Related Diploma Policy
自立した良識ある市民としての判断力と実践力/Judgment and practical ability as an independent citizen of sound sense
国際的感性とコミュニケーション能力/International sensibilities and communication capabilities
時代の課題と社会の要請に応えた専門的知識と技能/Expert knowledge and skills to address the issues of the age and the demands of society
 
到達目標
 本講義の目標は、受講生が①今日の日本の大学において学ばれている学問が、いかなる歴史的、文化的背景のなかで生まれ、それがいかなる役割を果たしてきたかを知ると同時に、⓶これからの時代にいかなる役割を果たしうるかを考えていくことに存する。日本は、明治期に、国家の文明化を目的としてヨーロッパの学問を取り入れたが、本講義では、現代においてヨーロッパ文明の内実を問うことが、現代日本の社会の基礎を問うことといかに密接不可分に結び付いているかを明らかにすることを試みる。
 
授業内容
 本講義は、主に、近代ヨーロッパ文明の基礎が形成された15世紀のイタリア・ルネサンスの時代から18世紀のイギリス、フランスを中心とした啓蒙の時代にかけて生きたマキァヴェッリ、ハリントン、ヒューム、モンテスキューらの思想の分析を通じて、人間、社会、国家に関する認識が、いかにして精緻化されていき、それが近代社会科学の基礎を形成するに至ったかを明らかにする。
 
授業計画
 各回の講義内容は、次のように予定しているが、時間の関係、あるいは学生の関心に応じて若干変更する場合もある。
 講義の予習としては、教科書の当該個所を予め読んでくることが必要になる。また、思想は、自らが考えることが重要な意味をもつ。したがって、復習としては、受講者が各論点に関する自分の考え、疑問点などを書いてまとめておくことが、自らの独自な考えを追求し、洗練させるのに役立つ。授業中に関連する参考文献も紹介するので、それらを読むと授業内容の理解がいっそう深まる。以上、予習・復習合わせて各回あたり約4時間の自己学習を想定している。

1. ガイダンス/社会思想史とは何か
 シラバスの記載事項を確認する。その上で、現代の大学において社会、思想、歴史を学ぶことの意味を掘り下げる。
2. 第二次世界大戦後において思想が持つ意味
 ハンナ・アーレントが第二次世界大戦の反省として展開した全体主義批判の背景を確認した上で、彼女が、その原因を追究するに際して、なぜ歴史に依拠したかを考察する。
3. ハンナ・アーレントにおける古代社会と近代社会の対比
 アーレントが、近代社会の批判する際に、古代ギリシアを参照し、そこで理想化した「人間の条件」の哲学的考察の意味を明らかにする。
4. ルネッサンスと古代社会の再発見
 13世紀以降のイタリア都市国家における共和政の発展が、古代社会の再発見に結び付く原因を理解する。
5. マキァヴェッリの『ディスコルシ』における古代共和政の認識
 マキァヴェッリが同時代に直面した問題が、いかにしてその古代ローマの歴史解釈に反映されたのかを考察する。
6. マキァヴェッリの『君主論』とマキァヴェッリズムの問題
「国家」と呼ばれるものの原型が形作られた時代に生き、それを思想として表現したマキァヴェッリが向かい合った問題を学ぶ。
7. マキァヴェリにおける国内の秩序維持のための裁判制度の重要性
 マキァヴェッリの問題は、国家の防衛であると同時に長期的な国内秩序の維持だった。この問題に関して、特に裁判制度に注目して分析した上で、今日における死刑制度廃止の世界的な傾向の理由を考察する。
8. ジェイムズ・ハリントンの『オシアナ共和国』における政治の科学
 マキァヴェッリの影響を受けたジェイムズ・ハリントンが、共和主義思想を17世紀半ばのイングランドに導入した時代的文脈を明らかにすると同時に、政治権力の基礎に関する社会科学的分析の意味を学ぶ。
9. ハリントンのユートピア論とアメリカ合衆国の建国の意味
 ハリントンの平等に基づく共和主義思想は、同時代のイングランドでは実現を見なかったが、それは代わりにアメリカ合衆国においてより具体的な実現可能性が模索されることになった。その歴史的背景と理由を明らかにする。
10. デヴィッド・ヒュームにおける近代的統治機構の確立
 近代社会を特徴づける商業の発展、そして中央集権国家の整備によって政治の在り方は根本的に変容した。そこで「世論」の役割が増大したことが、いかにして近代民主政治の基礎を形成したかを学ぶ。
11. ヒュームにおける文明社会と分業の発展
 近代経済学の父と呼ばれるアダム・スミスに大きな影響を与えたヒュームにおける経済学的思考の形成を学ぶ。
12. モンテスキュー『法の精神』におけるイギリス商業社会の分析
 名誉革命以降のイングランドにおいて、市民の商業活動の発展が、いかにしてこの国の法律に基づく統治の基礎を形作ったかを、フランス人の眼から考察したモンテスキューの思想を考察する。
13. モンテスキューとヒュームにおける世界経済の分析と「人間性」の認識の相違
 ヨーロッパ文明の歴史的形成に関して、法学的観点を重視するモンテスキューと、経済学的観点を重視するヒュームの相違を明らかにする。
14. 総論 ヨーロッパ文明とは何か。
 これまで扱ってきた問題を総括し、ヨーロッパ文明の複雑性を認識すると同時に、その遺産を批判的に再評価することを試みる。


 
授業運営
 講義形式で行う。講義中の質疑応答は、時宜を見計らって受け付ける。
 
評価方法
 学期末の試験で評価する(持ち込み不可)予定ではあるが、状況によって他の評価方法に置き換えることがある。出席状況は評価の対象としないが、学期を通じて2回程度実施する予定の質問アンケートは僅かに(100点満点中の3点未満)考慮することがある。


 
オフィスアワー
 質問や指摘は、授業終了後にその場で受け付ける。
 
使用書
坂本達哉『社会思想の歴史-マキァヴェリからロールズまで』[名古屋大学出版会]2014

参考書
ハンナ・アレント『人間の条件』[筑摩書房(ちくま学芸文庫)]1994

 
 
 
[前へ戻る]