[前へ戻る]
   

 授業科目
 Course Title
日本文化論(古典文学)
Japanese Cultural Theory (Pre-modern Literature)
 担当者
 Instructor
教授   深澤 徹  前学期 金曜日2時限
 単 位
 Credit
2

関連するディプロマポリシー Related Diploma Policy
自立した良識ある市民としての判断力と実践力/Judgment and practical ability as an independent citizen of sound sense
国際的感性とコミュニケーション能力/International sensibilities and communication capabilities
 
到達目標 Target to be Reached
 本講義の到達目標は、受講生が、自分たちが常日頃用いている日本語の書記様式について、改めて反省的な意識を持つことにある。東アジア儒教文化圏の中にあって、日本が武家社会を中心として独自の歩みを始める過程は、古代都市平安京の都市空間を背景とした「漢字漢文」から『源氏物語』に代表される「かな文」への移行・併存として把握することができる。ついては、
 ①漢字漢文(これは本来外来の異文化である)の先行という変則的な事態の意味を理解した上で、
 ②漢字漢文による文章表現の蓄積が、やがてかな文へと翻訳・翻案され、
 ②書き言葉としての日本語の完成形態として『源氏物語』の文体が出現する。
 ③さらに鎌倉幕府の法令集『御成敗式目』の制定による東アジア文化圏からの文化的自立を、かな文の成立を通して理解することに、その目標が定められる。
 学士課程教育のカリキュラム・ポリシーに従い、学士として持つべき力の実現のため必要かつ十分な基礎的学力の修得という目標に即して、受講生には、東アジアの中でも特異な武家社会が日本において成立するにあたり、かな文字による日本語の書き言葉の成立が果たした重要な役割への理解が可能となる。
 
授業内容 Course Content
 本講義の中心主題はかな文による「主体(サブジェクト)」形成である。その際のキーコンセプトとなるのが、「都市」と『源氏物語』である。東アジア漢字文化圏の周縁に位置し、絶えずオリエンタルなまなざしにさらされてきた日本で、なぜいち早く文化的な「主体」形成が可能であったのか。その根幹には、「識字」を通した『源氏物語』の達成があった。以上の問題意識のもとに、講義は展開される。
 「漢字漢文」を通しての長い文化移入の過程をへて、10世紀段階になると、多様な言語がひしめきあう都市的な成熟を見る。そうした中、漢詩文を翻訳・翻案する行為を通して「かな文テキスト」が成立し、その「かな文テキスト」を基盤に「主体」形成が可能となった。
 ついては、まず漢字漢文テキストを跡付けることからはじめ、やがてかな文テキストとしての『源氏物語』が成立してくる過程を跡付ける。さらにはその両者を併存させ統合する形で、和漢混交文としての『方丈記』が成立してくる過程を跡付けることとなろう。
 
授業計画 Course Planning
 各回の講義内容は以下のように予定されている。
 予習については、①指定テキストをあらかじめ読んでおくこと、②配布したプリント類もあらかじめ目通ししておくことが求められる。
 復習としては、①講義内容とテキストの記述内容、および配布プリントとを関連付け、文章化しておくために、聴講ノートを作成することである。ちなみに本講義では、予習復習あわせ毎回4時間の自己学習を想定している。

なお以下のうち1~2回はゲスト講師を招き、『源氏物語』についての最新の研究知見を披歴してもらう予定でいる。
1.イントロダクション
  シラバスの記載内容の確認と、都市を背景とした和漢混淆文の成立による主体(サブジェクト)形成の文化的意義について学ぶ。

2.書き言葉としての日本語の到達点として源氏物語の位置づけを学ぶ。
3.バックグラウンドとしての平安京の多言語化した都市空間について学ぶ。
4.都市の文学としての『池亭記』について概説する。
5.『池亭記』にみる「家」の論理について学ぶ。

6.都市の文学としての『新猿楽記』について概説する。
7.『新猿楽記』にみる「市」の論理について学ぶ。
8.都市の文学としての『源氏物語』について概説する。
9.『源氏物語』の〈語り〉の特質について学ぶ。

10.『源氏物語』における「家」の論理について学ぶ。
11.作者紫式部の姿を『紫式部日記』を通して瞥見する。
12.都市の文学としての『方丈記』について概説する。
13.和漢混交文(漢字カタカナ交り文)で書かれた『方丈記』の、その表象史的意味について考える。

14.仏教思想に言う「無常」について考える。

 
授業運営 Course Management
 すべて講義形式で授業は行う。古典のテキストは原文を用いるが、その都度現代語に訳し、意味を説明した上で講義を進めていく。したがって、高校の古文の基礎的知識があれば対応できる内容である。映像資料や、パワーポイントの画面を多用し、視覚的に理解が可能なよう工夫して講義を進める予定である。
 
評価方法 Evaluation Method
 記述式の臨時テスト(40%)を講義期間の半ばに行い、それと最終試験(60%)を合わせ、2回の試験を行う。すべて「持ち込み可」とするが、その意図は、日本語の文章力(識字能力)を最大限重視し、それを評価するためである。したがって図式化や箇条書きは認めない。講義を通して与えられた様々な知識を有機的に関連付け、それを筋道立った文章として表現することが求められる。本講義の趣旨は、「識字」に基づく主体形成について理解することにある。与えられた情報を、単なる知識としての理解するにとどまらず、具体的な言語実践を通して、それらを自らの主体形成に寄与する知恵へと血肉化していってほしいと願うゆえである。
 
オフィスアワー Office Hour (s)
 火曜日2限、金曜日5限の時間帯に、17号館430研究室(内線4318)にて受け付ける。
 
使用書 Textbook (s)
井上真弓他編『平安文学十五講』初版[翰林書房]2012

参考書 Book (s) for Reference
深沢徹『往きて、還る。―やぶにらみの日本古典文学』[現代思潮新社]2011
深沢徹『都市空間の文学-藤原明衡と菅原孝標女』[新典社]2008
深沢徹『新・新猿楽記―古代都市平安京の都市表象史』[現代思潮新社]2018

 
 
 
[前へ戻る]