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 授業科目
 Course Title
近世史料学特論
Early Modern  Japanese History 
 担当者
 Instructor
教授   田上 繁  前学期 火曜日7時限
 単 位
 Credit
2

到達目標 Target to be Reached
 本講義の到達目標は、受講者が、①これまで日本近世史研究を主導してきた理論的枠組みである「幕藩制構造論」を理解するとともに、その矛盾点や限界性を把握すること、②理論先行の研究を克服するため、原文書の内容を精密に分析して理論を導き出していくことの重要性を認識すること、③そのためにも、支配文書や地方文書などの古文書を正確に解読する能力を養うこと、④「太閤検地」の性格を高く評価して、石高=生産高と捉えた従来の研究に疑問を挟み、石高=年貢高の妥当性、年貢における免の新解釈について理解すること、等々を通じて時代区分論をも含めた、新たな日本近世史像の構築を視野に入れる力をつけられることである。
 
授業内容 Course Content
 近年、日本近世史の研究分野においては、従来の通説や定説といったものが根底から見直されている。特に豊臣秀吉の「太閤検地」についての評価が大きく変わってきた。高校日本史教科書の近世部分の記述で、秀吉の政策として最初に出てくるのが「検地と刀狩」であることからも分かるように、日本近世史を理解しようとする場合、秀吉の土地政策・百姓支配のあり方が重要な課題となる。また、「村請制」による村の年貢や諸役の負担についても、これまでは領主権力の強さばかりが強調されてきたが、必ずしもそのような評価はできず、新たな視点からの「村請制」の性格づけが必要となっている。
 本講義では、このような日本近世史の研究動向を踏まえ、土地・年貢制度を中心とする近世文書、特に地域に伝存する地方文書を取り上げ、それらを解読し理解することによって受講者とともに通説の克服を試みる。と同時に、文書の成立事情や伝来系統を念頭に置きつつ、その内容・形態・機能等を分析し、実証分析に耐えうる文書の性格を確定していく。その場合、地方文書の写真コピーを利用しながら講義を進めるので、地域の文書調査に参加してもらうこともある。
 
授業計画 Course Planning
 日本近世史に関する先行研究を読み合わせるとともに、近世社会を理解する上で必要な地方文書の写真コピーを読み進める。

1.ガイダンス/近世史料学の学び方
   近世史料学特論では何を学ぶのか、その研究対象や方法論について解説する。
2.日本近世史研究の現状
   通説となっている「太閤検地」の理論的枠組みを把握する。
3.日本近世史の通説の問題点
   「太閤検地論」を基礎にして構築された「幕藩制構造論」の理解と、その問題点を理解する。
4.加賀藩検地の実施方法
   加賀藩の検地の実態を分析し、豊臣秀吉による「太閤検地」の方法や内容との同質性と異質性を探る。
5.加賀藩検地の性格
   加賀藩の初期検地の分析を通して、領主は基本的には土地に対し無関心、不干渉であったことを論証する。   
6.石高=生産高の矛盾点
   「太閤検地」論で展開された石高=生産高の理論的な問題点や矛盾点を指摘する。
7.地方巧者五十嵐篤好の石高の捉え方
   加賀藩の十村五十嵐篤好が著した「高免考」「高免名義追考」などから石高の性格を把握する。
8.石高=年貢高の新解釈
   加賀藩の検地の実態や五十嵐篤好の石高の捉え方などから、石高=年貢高の可能性を探る。
9.年貢における免=生産高分配比率の矛盾点
   免は石高=生産高を領主と百姓との間で分配する比率であるとする従来の見解を克服する。
10.地方巧者五十嵐篤好の免の捉え方
   加賀藩十村五十嵐篤好の通説とは異なる免の捉え方を理解する。
11.年貢における免の意味変化
   加賀藩の年貢関係史料の分析を通して、免の変化転換の意味を問う。
12.年貢における免の新解釈
   石高=年貢高という新解釈とともに、免についても新説を学ぶ。
13.近世村社会と「村請制」
   割地慣行に基づく村の土地の掌握のあり方を通して、「村請制」の意味を問い直す。
14.新たな日本近世史像の構築の可能性
   「幕藩制構造論」の見直しを通して、時代区分論を含めた日本近世史像の再構築の可能性を展望する。
15. 総括
   前期の講義内容の総括を行う。
 
授業運営 Course Management
 特定のテキストは使用しない。適宜配付する史料や論文のコピーをテキスト代わりとして、受講者の発表および討議形式で進める。
 
評価方法 Evaluation Method
 平常点とレポート等で判定する。
 
オフィスアワー Office Hour (s)
 授業中に指示する。
 

参考書 Book (s) for Reference
田上繁ほか『奥能登と時国家 研究編1』[平凡社]1994年
田上繁ほか『奥能登と時国家 研究編2』[平凡社]2001年
田上繁ほか『中世・近世土地所有史の再構築』[青木書店]2004年

 
 
 
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